⑫シングルマザーに育てられ~最後に

目次

写真

母が亡くなって、一か月くらい経った頃。

私用で写真が必要になったので、友達に頼んで僕の写真を撮ってもらった。

なんの変哲もない、たまたま撮ってもらったポートレイト写真。
公園で何枚か撮影した。

その写真の中から1枚が気になり、当時しばらく部屋の壁に鋲で留めて飾っていた。


それから20年以上が過ぎたが、その写真は今も持っている。

別に自分の写真を見るのが好きなわけではない。
どちらかというと自分の写真を見るのは、あまり好きではない。
しかし、この1枚の写真は時々見返すことがある。

なぜなら、

その写真の中の自分は

シングルマザーに育てられた子が、

母を失い、帰省する場所も失った。

そしてこれからは都会で一人。

それでも負けずに何とか生きていくんだと。

そんな小さな決意をした顔で写っているからだ。

母を失ってからの10年間は、辛いことが多かった。
精神的にも経済的にも苦しかった。

ようやく10年経った頃から、少しづつ良くなってきた。

特に、子どもが生まれてからは世の中を見る目が劇的に変わったと思う。

親の立場になって、子を思う親の気持ちがわかるようになった。

ニュースで、子どもが絡む悲しい事件が報道されていると、涙なしでは見れなくなった。

そして時々、母を思い出す。
母は幸せだったのだろうかと。

淡々と働き、子ども3人を育てた母。
贅沢もできず、男にも恵まれず。
一日中、働いて疲れて。
寝ることだけが幸せだ、と言っていた母。

子育てが終わり、あるていど自由に自分の好きな生活をおくっていた矢先、突然の病気で世を去った。

そんな母の人生を想う。

最後に

母とのエピソードを、ひとつひとつ思い出しながら、数か月にわたってこの記事を書いてきた。
「シングルマザーに育てられ」は、いったん終結。

自分の中の思いなど、たくさんのことが整理できた気がする。

母には感謝している。
僕は大雑把に育てられたが、なんとか自立して生きてこれたから。


母は、55歳で亡くなった。

僕はその母の年齢に少しづつ近づいてきている。

これからも、大変なことに直面し、落ち込むことがあるかもしれない。

そのたびに僕は、何度も小さな決意を繰り返して生きていくんだと思う。


つたない記事を読んでくださった方。

母のことをたくさん思い出すことができてよかった。

「ありがとう」